東急グループは、一般人の「沿線」にかんするイメージをつくり出したそうで――(写真提供:Photo AC)
『沿線格差』という言葉を目にすることが増えましたが、フリーライターの小林拓矢さんいわく、「それぞれの沿線に住む人のライフスタイルの違いは、私鉄各社の経営戦略とも深くかかわっている」のだとか。今回はその小林さんに、東急電鉄沿線の魅力と実情を紹介していただきました。東急グループは一般人の「沿線」にかんするイメージをつくり出したそうで――。

東急電鉄沿線の魅力と実情は?

「沿線」「沿線格差」「私鉄沿線」と聞いて、多くの人がイメージするのはおそらく東急電鉄沿線ではないだろうか。

もちろん、そうなるのも仕方がない。一般人の「沿線」にかんするイメージをつくり出したのは東急グループだからだ。

鉄道があり、商業施設があり、住宅があり、そしてその地域から都心の職場や学校に通う――つまり、「沿線」というものを意識してビジネスを展開したのは、関東では東急グループが最初である。

そもそも東急グループの前身「田園都市株式会社」は、渋沢栄一(しぶさわえいいち)が郊外住宅地の開発のために創設した会社であり、鉄道事業とあわせて事業を展開しようとしていた。

当初は関西にて沿線ビジネスを確立していた小林一三(こばやしいちぞう)に手伝ってもらっていたが、鉄道事業のために五島慶太を推挙し、目黒蒲田電鉄ができることになった。

それ以来、五島慶太は路線網の延伸や近隣路線の買収・統合により、鉄道事業の規模を拡大させるだけではなく、住宅開発や百貨店事業の展開、それらを含めた沿線ビジネスの複合展開を行なうことで、企業規模を発展させていく。

学校の誘致にも積極的で、通学需要も生み出し、それらの学校の存在が鉄道路線の価値を高めるという状況になっていった。