多摩田園都市

「沿線格差」関連の話題で、東急電鉄がセレブ路線として扱われるのには、背景の経済的豊かさと、知的豊かさが理由となっていると考えていいだろう。

そのあたりを極限まで突き詰めたのが、戦後の成長期に東急が中心となって開発した多摩田園都市である。

東急沿線にもタワーマンションが多く建つエリアがある(写真提供:Photo AC)

広い住宅地、商業施設の完備などに力を入れ、多くの大卒者たちがそこで家庭を持ち、子どもを中学受験させた。

この沿線には都心からかなり離れていても中学受験の塾が多くある。そして、東急電鉄の沿線ファミリーは、再生産されていく。

近年、高学歴・高所得層は、タワーマンションに暮らしているということもよくいわれる。東急沿線にもタワーマンションが多く建つエリアがある。東急東横線の武蔵小杉駅周辺だ。

このあたりは京浜工業地帯のなかで、かつては電気関連や新聞輪転機関連の工場が立ち並んでいたが、工場は郊外に移転し(もっとも、これらの工場ができたときには武蔵小杉周辺は郊外だった)、その跡地がタワーマンションとして再開発された。

工業地帯は土地こそ広いものの、田園都市線沿線のように地盤がしっかりしているわけではない。そこを技術力で克服し、巨大なマンションがいくつも建つようになっていった。

このあたりのタワーマンションを選ぶ人たちは、もともと東急沿線に生まれ育った人たちが多いのではないかとを考えることも可能だ。