東急グループの基本戦略

東急グループがターゲットとしたのが、高等教育を受けたファミリー層である。

戦前の教育制度の時代には高等教育を受けた人はいまよりもずっと少なかったが、そういった層に鉄道サービスと住宅サービス、その他商業サービスを提供するという方針を貫いてきた。

鉄道を中心に地域をまるごと開発し、そこに豊かな層が暮らせるようにすることで沿線価値を発展させる、というのが東急グループの基本戦略である。

沿線にある世田谷区の保坂展人(のぶと)区長は、元社民党の国会議員という経歴を持っており、地域の中心人物でもなければ、保守的でもないタイプの政治家は首長になりにくいという傾向があるにもかかわらず、2023(令和5)年の統一地方選挙で4期目の当選を果たした。

『関東の私鉄沿線格差: 東急 東武 小田急 京王 西武 京急 京成 相鉄』(著:小林拓矢/河出書房新社)

社民党経験のある自治体のトップで知られるのは、ほかに兵庫県宝塚市の中川智子市長の例があるものの、こちらは阪急沿線となっている。

ブランド力の高い沿線に、そのような層が集まるのは興味深い。