大場 先ほど、ずっと安静にしていると寝たきりになる可能性が高まるとおっしゃいましたが、ほかには何がきっかけになるのでしょう?

安保 厚生労働省のデータによれば、ほぼ寝たきり状態の「要介護5」に認定される原因のトップ3は脳卒中、認知症、骨折です。また、日常生活に多少のサポートを必要とする「要支援」になる一番の原因は関節疾患。膝や腰などに痛みがあると動くのが億劫になり、その結果、全身の筋肉が衰えて寝たきりにつながる場合もあります。

大場 同居している夫の父も、年明けにギックリ腰を経験しました。当初、「あの痛みをもう一度味わうのが怖い」と、ほぼ寝たきりで過ごしていて。少しでも動いてもらいたいな、と思っていましたが……。

安保 すでに腰の痛みが治まっているなら、どんどん動いてもらったほうがいいでしょう。寝たきりを防ぐには、とにかく歩くこと。適度な負荷がかかると骨をつくる骨芽細胞が活発化するので、歩くことで骨が丈夫になります。

また、足の骨を支える大腿四頭筋(太もも)、下腿三頭筋(ふくらはぎ)、背筋などが鍛えられ、転倒・骨折の予防にも。血管の機能も改善され、脳卒中の原因になる高血圧や脂質異常症が緩和されるんですよ。

大場 「歩く」って万能なんですね。よく言われるように、1日1万歩、歩いたほうがいいのでしょうか。

安保 必ずしも1万歩歩く必要はありません。群馬県中之条町で、65歳以上の住民5000人を対象に調査した「中之条研究」では、1日2000歩歩くと寝たきりを防ぐことができ、5000歩歩くと認知症や脳卒中の予防になるという結果が出ています。

大場 2000歩でいいならハードルが低くなりますね。