なぜ「おばあちゃん」
そうそう、なぜ芸名が「おばあちゃん」になったのか。
実は、発案者は私ではありません。同期の男の子のひと声で決まりました。
というのも、ある日のネタ見せで、来た順にホワイトボードへ芸名を書くように指示されたんです。でも私はそもそも芸人になれると思ってなかったので、何も考えていなかった。
「クレオパトラじゃダメかしら……」なんてぶつぶつ言いながらボードの前にたたずんでいたら、後ろから声が飛んできました。
「おばあちゃんだから、おばあちゃんでいいじゃん!」
すると周りの子たちも「いい名前じゃん。おばあちゃん!」と賛成してくれた。
うん、見たまんまだし、悪くないな。こうして、あっさり決定しました。
今ではしっくりと馴染み、これ以外に良い芸名はないと思える、愛着のある名前です。
話を戻しますと、ほかの生徒たちに迷惑をかけないためとはいえ、私への特別扱いを良く思わない子もいるだろうなと、申し訳ない気持ちもありました。
もちろん、直接悪意を向けられたことはなく、優しく接してもらった記憶しかありません。
それでも、若い子たちはお笑いで一旗揚げようとこれからの長い人生をかけてNSCに来ているわけですから、「年寄りってだけで目立つなんて冗談じゃない」という考えがあってもおかしくありません。
ですから、在学中はあまりでしゃばらないように気をつけました。
たとえば、授業で講師にネタを見てもらうのは、原則1回。時間に余裕があって2回、3回と発表できる場合もありましたが、その時は若い人に譲る。そう決めていました。
老い先短い私には伸びしろはないですもの。若い人にどんどん伸びてもらいたい。その一心でしたね。
※本稿は、『ひまができ 今日も楽しい 生きがいを - 77歳 後期高齢者 芸歴5年 芸名・おばあちゃん』(ヨシモトブックス)の一部を再編集したものです。
~『ひまができ今日も楽しい生きがいを』出版記念 サイン&撮影会~
芸人・おばあちゃんのサイン&撮影会が23年4月10日(水)に神保町よしもと漫才劇場にて開催。当日、劇場のショップで書籍『ひまができ今日も楽しい生きがいを』をご購入いただいた方に限り参加いただけます。詳細はXのおばあちゃんの書籍アカウントにてお知らせしています。
『ひまができ 今日も楽しい 生きがいを - 77歳 後期高齢者 芸歴5年 芸名・おばあちゃん』(著:おばあちゃん/ヨシモトブックス)
71歳でひょんなことから吉本興業の芸人養成所(NSC)に入り72歳で芸人デビューした、その名も「おばあちゃん」。
――おばあちゃんはなぜ芸人になったの? そして、なんでそんなに楽しそうなの? クスっと笑えるエピソードやホロリとくる昔話までたくさん語ってくれました。