清少納言の好きな季節はいつだったか?

『頃は、正月・三月・四月・五月・七八九月・十一二月、すべてをりにつけつつ、一とせながらをかし。』

折につけ、一年中「をかし」という清少納言がはずしている頃は、二月・六月、そして十月である。

なぜ二月・六月・十月を入れないのか。今の暦でいえば十月は、天気といい風景といい一番良い季節のはずだが。良い月ではなかったのか。

『ひとりになったら、ひとりにふさわしく 私の清少納言考』(著:下重暁子/草思社)

二月は厳寒、六月は梅雨があるので好きではなかったとして納得はいく。

では雨が嫌いかというと、長雨の日には恋人である男の寄りかかっていた簾の残り香が、『まことにをかしうもありしかな』といい、その香が雨にしめって艶なる風情をさらに増していると雨の夜を賛美している。

しかしこれは、五月の長雨の頃と思われる。

雨は物思わす風情あるもので、「枕草子」にも数多く登場する。

「眺(ながめ)」という言葉は「長雨(ながめ)」から出たとも言われるが、長雨には、外へも出られず、ただ眺める、物思いにふけるという意味が込められている。