(マンガ:中川いさみ)
厚生労働省によると、認知症の患者は2025年に約700万人まで達するとされています。一方で「認知症の症状は、お天気と同じで晴れたり曇ったり。思うようにいかない日があれば、心が通じ合う<晴れ>の瞬間もある。周囲はそんな<晴れ>を増やす方法を知っておくことが大切だ」と理学療法士の川畑智さんは語ります。その川畑さんいわく、認知症の人には「細かく指示をすること」が、足枷になってしまうことがあるそうで――。

指示されると、できなくなってしまう?

認知症になると、普段は問題なくできている行動が、指示されたとたんにできなくなってしまうことがあります。

たとえば、別れるときに普通にバイバイと手を振り、お箸で上手にご飯を食べている人が、「さよならと言いながら、右手を前に出して左右に振ってください」「左手で茶碗を持って、右手でお箸を使ってご飯を食べてください」と言われたとたんにできなくなってしまいます。

これを「観念運動失行」といって、認知症の人には必ずあらわれる「失行」という症状のひとつです。

「観念」によって「運動」を「失行」する。

自分で自然にやっている場合にはできるものの、誰かの指示が入ると、たちまち体を動かすための運動計画がまとまらなくなり、体を動かすことが難しくなるという現象が起きてしまうのです。