中古物件でも1億円超え

では、販売数が限られる新築マンションではなく、中古マンションで1億円を超えるような物件はどれくらいあるのでしょうか。

2023年9月の中古マンションサイト・HOMES(ホームズ)から、東京23区内でどのくらいの億ションが売りに出ているのかを調べたのが下図です。

1億円以上の中古マンション数(東京23区)<『なぜマンションは高騰しているのか』より>

このサイトでは、同じ物件が複数の業者から売りに出されているケースがあるので、数値としては一部重複がありますが、だいたいの傾向を見るうえで参考になるでしょう。

港区は、住民の平均年収が23区のなかでもっとも高いと言われている通り、掲載数は256物件と突出していますが、千代田区、中央区を含めた都心3区だけでなく、渋谷区、新宿区、目黒区などで50戸以上の掲載数が確認できます。

また、タワマンが多数供給されている品川区や江東区は一頃(ひところ)、都心部と比較して割安感がありましたが、今や億ションエリアに入っていることが見て取れます。

下町エリアでも台東区の上野(うえの)近辺や墨田区の錦糸町(きんしちょう)近辺、どちらかと言えば戸建て住宅街の印象の強い杉並区や練馬区でも億ションが普通に登場するようになっています。

どこもかしこも億ションだらけ。それでも流通し、マーケットが成立しているところからも、もはや、「東京のマンションは億ションが当たり前」になったと言えるのです。

※本稿は、『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
「沿線格差」の頂点!?路線が長くもなく観光地もない東急電鉄が「セレブ路線」として扱われるようになった背景とは…戦前から貫かれる<東急グループの基本戦略>
東急のようなブランド力や一体感が希薄な「西武鉄道」。ちぐはぐな開発が行われた原因は創業者一族の折り合いの悪さにあった?
なぜ東武鉄道沿線は地域開発でおくれをとり、他の私鉄のような商業的・文化的蓄積が生じなかったのか…その誕生からひもとく

なぜマンションは高騰しているのか』(著:牧野知弘/祥伝社新書)

マンション価格の高騰が止まらない。

かつて「億ション」、すなわち1戸=1億円以上のマンションが騒がれたことが噓のように、今や「2億ション」「3億ション」でないと、不動産業界では超高額マンションと呼ばない。

東京だけではない、大阪でも25億円の物件が登場した。いったい誰が買っているのか? 驚愕の価格の背景には何があるのか? 日本社会はどう変わっていくのか? 業界に精通した著者が読み解いていく。