夕食後はテレビを見てくつろいだり、趣味の編み物や裁縫を楽しんだりして過ごす。取材時、首に巻いていたニットのマフラーも恵美子さんの作品だそうだが、既製品と見間違う仕上がりだった。
「着物をリメイクして、ワンピースを作ることもあります。母は手先が器用な人だったので、私もその血を受け継いだのかもしれませんね(笑)」
恵美子さんは薬科大学を卒業後、旧厚生省の研究所に研究者として就職。定年まで勤め上げ、その後も週に1度、専門学校の非常勤講師を務めていた。なんとその生活を89歳まで続けていたというから驚きだ。
「研究所では化粧品の分析をしていました。たとえば、欧米から輸入された化粧品と日本で製造された化粧品とでは成分が違います。そういう配合を見極める試験などをやっていたんです。
専門学校では、その経験を生かした授業をしていました。毎回生徒さんが提出する大量のレポートを読んでコメントを書くのは大変でしたが、何歳になっても必要とされたり期待されたりするのは幸せなこと。忙しさが張り合いになって、今日まで健康でいられたのだと思います」