お客さんの症状をよく知るために、1~2時間話し込むことも

終戦後、25歳で結婚。夫婦で東京へ戻り家を建てた。2人の子どもに恵まれ、さあこれからという時に、暮らしを一変させる出来事が起こる。商売をしていた夫が親友の保証人になり、財産を失ってしまったのだ。

「残ったのは小さな家だけ。これは大変だと頭を抱えました」

そんなある日、夫の友人からある提案が。それは、圭左さんが持っている薬剤師の資格を生かして、薬局を開いてみてはどうかという話だった。

「夫もやってみようと言うので、住んでいた家を売ってオンボロの平屋を購入しました。右も左もわからないなか、薬局をやっているお友だちのところで勉強させてもらい、開店にこぎつけました。30歳の時です。日本経済が発展していく時期で、風邪薬も石けんも、並べたそばから売れました。父が言ったとおり、お免状が役に立ったわけです」

その後、先輩の勧めで漢方を学ぶため学校に通った圭左さん。工学部出身の夫も一緒に勉強して助けてくれたという。

「ずっと二人三脚でやってきましたが、15年前に夫は亡くなりました。店で倒れ、病院に運ばれて1週間という早さでした。突然のことで悲しみはありましたが、何もわからないまま静かに逝けたのでいい最期だったと思います」