人格を尊重し自由に活動させる
人格を豊かに発展させるには、その活動を自由に、また多様にしなければなりません。
活動範囲や活動の種類を制限しておきながら、個人の人格の完成を求めるのは無理なことです。
活動したいという本能は、赤ちゃんのときから現れます。口で吸い、手でつかみ、足をバタバタさせます。
こうした筋肉の活動から精神の活動にいたるまで、その種類はさまざまです。
赤ちゃんはこんなふうに体を動かすことで、自分の能力を試しているのです。
もし、赤ちゃんの手足を縛って、活動を制限したらどんなに大きな苦痛を与えることになるでしょう。
その不自然さを理解する人たちが、なぜ思春期以降の少女たちの活動を制限する不合理について理解しないのでしょうか。
男女の性別によって、素質の優劣があると考えるのは偏見です。すべての少年少女に等しい教育の機会を与えたいと思います。
「女子の活動する領域」(『女人創造』より)
※本稿は、『与謝野晶子 愛と理性の言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
『与謝野晶子 愛と理性の言葉』(著:与謝野晶子・松村由利子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
近代歌壇を代表する歌人で『みだれ髪』や『君死にたまふことなかれ』などで知られる与謝野晶子は、文学の世界のみならず、社会評論の世界でも活躍しました。
晶子が書いた15冊の評論集の中から、選りすぐりの言葉たちと、晶子の歌や詩を織り交ぜながら「学ぶこと」「働くこと」「人生」「愛」「自由」などのテーマごとに読みやすく、わかりやすくまとめました。