いつかたくさんたまったら

子ども達は朝はぎりぎりに起きてきて、簡単な食事をとったりとらなかったりだから、僕ら夫婦はそれらが落ち着いてから、ゆっくりと朝食をいただくことが多くなった。

幸いにも僕の仕事は朝の時間がさほど早くはないから、朝のうちにだいたいの家事をこなしておけるのがありがたかった。また、そんな仕事の仕方を認めてくれた職場のメンバーにも感謝しかない。

『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(著:小林孝延/風鳴舎)

ごはんが終わると洗濯物を干して、ベランダで福のブラッシングタイム。これは薫の担当だ。

人間にあまり触られることが好きではない福だから、ブラッシング中は後ろ足の間に尻尾をたくしこんで耳をイカのようにしているが、繰り返し触られることで人間の手にも少しずつ慣れてきた。

永遠に換毛期が続くのではないか?というくらい、ブラッシングを繰り返すごとに大量の毛が抜けたが、薫はその抜けた毛を愛おしく丸めてジッパー付き保存袋に入れてとっていた。

あるとき、そんなの取っておいてどうするの?と聞くと

「いつかたくさんたまったらこれで福ちゃん人形でも作ろうかな?」と笑っていた。