手前が「鮮魚の酸辣茶碗蒸し仕立て泡菜餡」。奥の「前菜盛り合わせ」は、「クリームチーズの紹興酒漬け」や「蚕豆と雪菜の寄せもの」、風味豊かな自家製辣油も技ありの「よだれ鶏」など味わいや調理法の異なる5種が楽しめる。内容はその時々で少しずつ変わる

素材にこだわった四川料理をコースで楽しめる

料理上手だった祖父の影響で料理の道に進んだオーナーシェフの中園健司さん。店名の「新(あらた)」も、実は祖父のお名前だとか。

今はなき千駄木の「天外天」、老四川料理の名店、六本木「瓢香(ピャオシャン)」とバリバリの四川畑を歩んできた中園シェフ。二十有余年に及ぶ経験と研鑽の集大成として2023年1月、人形町に店を構えた。

モダンなエントランスに惹かれて中に入れば、オープンキッチンをぐるりと取り囲むカウンター席が印象的だ。四川料理といえば “麻辣味" と思いがちだが、決してそれだけではない。中園シェフがこう語る。

「四川料理は多様な味付けが特徴。蒸しスープなど辛くない料理も多く、食材を生かすことを念頭におきながら料理と向き合っています」

蚕豆や筍など旬の食材を取り入れた「前菜盛り合わせ」から始まる5500円のランチコースは、デザートまで含め8品ほど。酸辣味の泡菜(パオツァイ)(四川の発酵ピクルス)餡をかけたあいなめの茶碗蒸しのように、あっさりした味わいの中にアクセントをつけた味付けが絶妙だ。

〆には好みで麻婆豆腐や担々麺などを選べる王道の四川の味をぜひ。

〆の「麻婆豆腐」は、豚挽肉で作る肉味噌で はなく2時間煮込んだ牛バラ肉を使用。また、ニンニクではなく葉ニンニクを用い、ネギも九条ネギを使うなど中園シェフ流のアレンジが秀逸。花椒の風味とトウチの旨みでご飯が進む逸品。写真の料理はすべて5500円のランチコースから