(写真提供:Photo AC)
現在放送中のNHK大河ドラマ『光る君へ』。吉高由里子さん演じる主人公・紫式部を中心としてさまざまな人物が登場しますが、『光る君へ』の時代考証を務める倉本一宏・国際日本文化研究センター名誉教授いわく「『源氏物語』がなければ道長の栄華もなかった」とのこと。倉本先生の著書『紫式部と藤原道長』をもとに紫式部と藤原道長の生涯を辿ります。

越前国府の日々

越前国府は、現越前市(旧武生市)国府に比定されている。

ここに総社(そうじゃ。国内の神社を国府近辺の一ヵ所に集めた神社)や国分寺(こくぶんじ)があり、国府関連遺跡の発掘調査も進められている。

国府に到着した一行(紫式部は父に従い越前に下向していた)を、初雪が出迎えた。

紫式部は、「暦に『初雪が降った』と書きつけた日」、都を懐かしむ歌を詠んだ。

ここにかく 日野の杉むら 埋む雪 小塩(をしほ)の松に 今日やまがへる
(こちらでは、日野岳に群立つ杉をこんなに埋める雪が降っているが、都でも今日は小塩山の松に雪が入り乱れて降っているのだろうか)

紫式部が暦に日記を書き付けていたことに、まずは興味を惹かれる。

この「暦」が国司に頒布された具注暦(ぐちゅうれき)なのか、たんに日付を並べた自家製の仮名暦(かなごよみ)なのか、また紫式部は(男性貴族と同様の)和風漢文で「初雪降」と書きつけたのか、はたまた仮名で書いたのか、興味は尽きない。