(写真提供:Photo AC)
現在放送中のNHK大河ドラマ『光る君へ』。吉高由里子さん演じる主人公・紫式部を中心としてさまざまな人物が登場しますが、『光る君へ』の時代考証を務める倉本一宏・国際日本文化研究センター名誉教授いわく「『源氏物語』がなければ道長の栄華もなかった」とのこと。倉本先生の著書『紫式部と藤原道長』をもとに紫式部と藤原道長の生涯を辿ります。

越前下向の道

長徳2年(996)の秋、為時は越前に赴任し、紫式部は父に従って越前に下向(げこう)した。

この時、紫式部の身上に、誰か(特に宣孝)との色恋沙汰が持ち上がっていたのかどうかは、明らかではない。

妻を伴わなかった為時が赴任するに際して、当面の世話をするために、紫式部が同行したと考えても、何ら差し支えはないのである。

もしかしたら為時が漢文のできる自慢の女(むすめ)も宋人との交渉に使いたかったのかもしれないが。

もちろん、道長のまったく与(あずか)り知らぬことであった。