ハイジャック事件
そうした社内人事とは関係なく、私は全回のヤマ場となる第7回、8回の「ハイジャック事件」のストーリー構成を急ぐことにした。
念頭にあったのは、1977年9月に起きたダッカ・ハイジャック事件。
当時の福田赳夫首相が「人命は地球より重し」と「超法規的措置」を決断したことは、様々な論議を呼んだ。
運輸省管掌の事件であり、渡瀬恒彦演じる主人公は、運輸大臣でなければならない。
渡瀬の「派閥のボス」の芦田伸介は「法の番人」たる法務大臣に割り振った。
「人命」か、「法秩序」か、同じ派閥の「親分」と「子分」が対立するという皮肉な構図をこしらえた。
「事件」の対応に追われる大臣・渡瀬の留守宅では、妻・賀来千香子が「流産」の危機に見舞われる。反抗を続けていた前妻の娘・小川範子が賀来に付き添うことになる。
この辺りの、公私の「事件」の絡み合いは上手くいったと思う。
重森孝子も、こうしたアイデアを見事に脚本にした。