でも後にパルコから連絡があって、その他大勢のゲイの役で出ないか、って。それで年明け早々に晴海の特設稽古場で稽古が始まって、僕たちは色とりどりの長襦袢みたいなものを着せられて、ゲイの乱舞が始まるわけですよ。みんな奇妙奇天烈に踊ってる。
そしたら蜷川さんが僕を指さして、「そこのお前、お前だよ。もっとちゃんと気合い入れてやれよ、馬鹿野郎」って。すっかりやる気をなくして、翌日からはもう行かなかったですね。
それが蜷川さんとの最初の、出会いにならない出会いでした。(笑)
<後編につづく>
2024年5月7日(火)~26日(日)に「彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd」の第一弾『ハムレット』が彩の国さいたま芸術劇場大ホールにて上演予定
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吉田鋼太郎
俳優、演出家
1959年東京都生まれ。97年に劇団AUNを旗揚げ。蜷川幸雄演出のシェイクスピア作品に多数出演。2016年「彩の国シェイクスピア・シリーズ」2代目芸術監督に就任する。読売演劇大賞優秀男優賞、紀伊國屋演劇賞個人賞、芸術選奨文部科学大臣賞受賞。24年5月より「彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd」の第一弾『ハムレット』が彩の国さいたま芸術劇場大ホールにて上演予定
関容子
エッセイスト
雑誌記者を経て、エッセイストに。1981年『日本の鶯――堀口大學聞書き』で日本エッセイスト・クラブ賞、角川短歌愛読者賞受賞。96年『花の脇役』で講談社エッセイ賞、2000年『芸づくし忠臣蔵』で読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞を受賞。『勘三郎伝説』『客席から見染めたひと』ほか著書多数。最新刊『銀座で逢ったひと』(小社刊)が好評発売中