厚生労働省が行った「令和4年 国民生活基礎調査」によると、約46%もの人が「悩みやストレスを抱えている」と答えたそう。なかなか解決できない悩みは、「もうひとりの自分」が、心を守るために無意識に引き起こしているかもしれません。公認心理師・橋本翔太さんは、その心の防衛機能を「ナイト(騎士)くん」と名づけました。今回は、自著『わたしがわたしを助けに行こう ―自分を救う心理学―』より、つらい悩みに隠されたナイトくんの目的を解き明かします。
片付けられない、すぐに散らかってしまう人のナイトくんとは?
ナイトくんが、よかれと思ってがんばるから問題が起きる──。
少し意味がわかりづらいでしょうか。具体例をあげましょう。
クライエントさんとの心理セッションの中で、よく出てくるお悩み相談のひとつに「片付けられなくて困っている」というものがあります。
部屋を片付けてきれいにしておきたい、片付いた状態をキープしたい。
強く思っているのに、いざやろうとすると、めんどうくさくなる。
すぐ散らかしてしまう。
こまめに片付けられない。
どうして片付けられないのだろう……。
心当たりがある方も多いかもしれません。
じつはこれは、心の防衛隊であるナイトくんがよかれと思って「あなたが片付けられないように仕向けている」のです。
つまり、無意識には「片付けない方がいい理由」があり、だからナイトくんが、部屋が散らかるようにあえて仕向けていると言い換えることもできます。
「片付けない方がいい理由!? そんなのあるわけないでしょ!」
「片付いた方が気持ちいいし、こんな汚い部屋はイヤなんです!」
「いったい、どこに片付けない方がいい理由があるんですか?」
そう思う気持ちもすごくわかります。
でもこれは、顕在意識、つまり現時点で自分が自覚できる心の場所で考えると理解できないだけ。心理セッションを深めて心の深い部分にアクセスすると、驚くような理由が見つかります。
この理由はその人の生育歴、性格、過去の経験によって個人個人で異なるのですが、ここでは代表的なものを2つ紹介します。