七十五になる女友達がいる。天津飯を食べにいった友達だが、こないだはウチに呼んで町中華をやった。天津飯に麻婆豆腐(これも得意中の得意)、そして餃子専門店で買ってきた餃子を焼いて。
女友達は、学校の先生じゃないが「先生」と呼ばれるキャリアを持って生きてきた人だ。それがこの頃会うたびに中国の歴史ドラマ、「ろうやぼう」(『琅榜』)他の話をする。天津飯の日もウチ町中華の日もくり返したから、ついにあたしもその熱を理解した。
その彼女が「ルッキズムが」と言うのである。「ルッキズムが、それこそが私の人生で今まで全否定されてきたものだ。外見のよしあしでふりまわされるのは愚かなことだと信じ込まされて育てられた。私は熊本の田舎のよい子だった。質素に正直に誠実に、がモットーで、勉強するしかなかったのだ」
「あの頃人気があったのはロバート・レッドフォードとか『ウエスト・サイド物語』とかだったけど、私は見向きもしなかった。ビートルズや何かにハマってる子もいたけど、良い子(私のような、と身ぶりで示し)じゃなかったし、私はそんなもの、非現実の中でのあこがれにすぎないと思っていた。とにかく別世界だったのよね」と女友達は言った。