会場からの質問に2人の答えは――

介護は後悔したほうがいい

伊藤 そんなもんですよね。阿川さんへの次の質問は

「独身時代と結婚した現在で一番の違いはどこですか」。(東京都・60歳)

阿川 伊藤さんは、2回結婚してるからベテランでしょ。

伊藤 婚姻届を出したのが2回。その後アメリカでイギリス人と家庭をつくり、8年前に看取りました。

阿川 伊藤さんって、こう見えてひとりが嫌いなんですってね。

伊藤 大っ嫌い。私、結婚大好きなんですよ。もう、どんどんしたいわ。(笑)

阿川 今からですか。私も63歳で結婚したからエラそうには言えないけれど、なぜしたいの?

伊藤 寂しい! 私ね、犬3匹、猫2匹いるの。話しかけて抱きしめるぶんにはいいんだけど、音楽聴いても何か食べても、いいねとか、おいしいとか、感想を述べる者がひとりも……。

阿川 でも、生きてる亭主って人の話、聞いてないですよ。

伊藤 (口をあんぐり開けて)今、思い出した。夫が生きてるときは毎日死にやがれと思ってたのに、死んじゃうと、いい男だったなと……。いい亭主って死んだ亭主なのね。

阿川 (爆笑)遠藤周作さんにお聞きした話ですけど、高齢の男性が最後まで覚えているのが、妻と娘の名前なんですって。で、女性の場合は最初に忘れるのが、亭主の名前。

伊藤 あっちゃー、ホントに。私の父、死ぬその日まで熊本で独居してて、私はアメリカで暮らしてたけど、最後は1ヵ月半おきくらいで通っていたんです。私の代わりに娘のカノコが帰っても「比呂美」、私の母のことは「お袋」って言ったり。