時代の流れで変化する道路記号

当然ながら道路の記号も時代の流れに応じて変化する。

たとえば戦後の「昭和30年図式」で定められたのが「舗装部」と「不良部」であるが、これは急増していた自動車の走行環境を知ることが重視された表れだろう。

この図式は3色刷なので舗装部は褐色ベタ(後に網点)の表現となり、不良部には褐色の×印が付された。しかしその後は高度経済成長に伴って舗装区間が急速に増え、また道路全体の状況も改善されたためか、「昭和40年図式」ではどちらも廃止された。

その後は褐色表現が国道や主要地方道(5万分の1のみ)に用いられるように変化している。主要地方道は褐色と白を交互に示す方法だったが、こちらは同44年の「加除訂正」で廃止された。

外国の地形図は国によってさまざまだが、幅員で区別している例は少ない。

たとえばアメリカの2万4千分の1地形図ではインターステートの高速道路や州道をランクにより1級道路、2級道路に分け(図には車線数も)、「その他の道路」は舗装道、砂利道、ダートの3種類。

ドイツの2万5千分の1地形図は高速道路、主要道路(幅員6メートル以上)、その他の道(幅員4メートル以上)から徒歩道まで6種、こちらは日本に似たランク分けだ。

スイスも種類は似たようなものだが、特徴は徒歩道が広狭2種類あることだ。登山やハイキングのメッカならではの表現だろう。

※本稿は、『地図記号のひみつ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


地図記号のひみつ』(著:今尾恵介/中央公論新社)

学校で習って、誰もが親しんでいる地図記号。地図記号からは、明治から令和に至る日本社会の変貌が読み取れるのだ。中学生の頃から地形図に親しんできた地図研究家が、地図記号の奥深い世界を紹介する。