貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。現在もアルバイトを続けながら、「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。ヒオカさんの父は定職に就くことも、人と関係を築くこともできなかったそうで、苦しんでいる姿を見るたび、胸が痛かったという。第68回は「強さとはなにか」です。
無数にある箱の中で、たった1つの場所
中学生のとき、不登校になって、「もう自分はこの社会では生きていけないのだ」と思った。人の前に出ることが怖くなり、人目を避け、息を潜めるように生活した。自分は社会不適合者。問題あり。ここで生きられない私は、どこにいってもだめだ。そう思った。教師も、よく「ここで頑張れなかったら社会人になっても苦労するぞ」みたいなことを言っていた記憶がある。
でも、大人になって振り返ると、あんなに小さくて、奇妙な環境、合わなくて当然だよな、と思う。無数にある箱の中で、たった1つの場所を勝手に決められる。そこが合わなくても容易には環境は変えられない。なんという過酷な状況なのか。自分が弱かったからとか、おかしかったからではなくて、ただただ、そこが合わなかっただけなのだ。
社会人になって、20代前半の頃、酷いパワハラに遭い、離職した。転職活動中の派遣先でも、なぜか不機嫌に怒鳴り散らしたり、高圧的な態度で追い詰めてくる人によく遭遇した。まともに仕事を教えてくれないのに、聞くと不機嫌になる、ミスをすると怒鳴りつける。そんな環境ばかり続くと、だんだんと、こういう思考になっていく。私は、どこにいってもダメなんだ。これからもずっとこんな環境が待っている。
辞めたい、逃げ出したいと思っても、頭の中で、以前他の人から言われた言葉が再生される。「ここで踏ん張れなかったら、他の場所でもやっていけないぞ」。