自分が大丈夫な場所とそうではない場所
でも、転職を繰り返すうち、気が付けば「まとも」な職場に行きついた。上司は不機嫌になることも、怒鳴ることもない。こちらから聞く前に丁寧に教えてくれる。何か聞いても、同じことでも快く説明してくれる。社員以外にもみな平等に優しく、風通しもよい。そこに来て、私は「人間にしてもらっている」と思った。人間として尊重してもらって、人間としての尊厳を取り戻しているような感覚だ。
では、そんなまともな職場にいけたのは、私が変わったからなのか? と言うと、そうではない。本当に、ただただ、「運」だと思う。非人間的扱いを受ける職場に当たってしまったのも運。人間扱いしてもらえる職場に来れたのも運。ただ、それだけだ。
まともな職場環境を経た今、以前とは随分考えが変わったことに気が付いた。この社会には、無数の箱がある。だから、たとえそのひとつが合わなかったとしても、自分が悪いんじゃない。今頑張れなかったとしても、他の場所に行っても同じようにだめなんてことはない。自分が大丈夫な場所とそうではない場所がある。
無理をすることで、過酷な環境でも耐えられる自分になろうと努力しているつもりでも、ただ合わない環境で自分を擦り減らしているだけ。強さを身に付けようとして、実際には心を麻痺させようとしているだけ。だから、合わなければはやく見切りを付け、自分が大丈夫な場所を探せばいい。「ここでだめならほかでもやっていけない」は嘘!呪いの言葉でしかないのだ。