義母の異変

義父が倒れた日の夕方、ケイちゃんに病院から家まで送り届けてもらった義母に会いに、夫とともに実家に向かったときのことだ。

義母は暗い部屋で、1人でぼんやりと座っていた。そして私と夫に「お父さんはどうしたの?」と聞いた。私たちは絶句した。

『義父母の介護』(著:村井理子/新潮社)

それまで、義理の両親はどこへ行くのにもいつも一緒だった。「一卵性夫婦」と呼ばれるほど、2人は常に行動を共にしていた。

相棒とも言える義父が入院したことで、義母は途端に力を失った様子だった。しかも記憶が曖昧になり、状況を飲み込むことができないでいた。

義父の突然の入院で意気消沈した義母は、言葉少なだった。途端に気の毒になり、わが家に来て宿泊しないかと誘ったが、慣れた家を離れたくないと決して納得しなかった。

仕方なく、義母を実家に残して私たちは家に戻ったが、その後、義母は食が細くなり、すっかり痩せてしまった。

行動的で外出が多かった人が、出不精になった。電話の声にも張りがない。お父さんがいなくてとても寂しいと、ことあるごとに言う。