今年の四月の終わり、ジェリーが入院中の病院から自宅でのホスピスケアに移行することになった。

それを知った夜、あたしは眠りながら考えていた。夢というんじゃないけど、夢だったのかな。ジェリーはもう死ぬんだと考えている夢を見ていたような気もする。

というのもうちの夫が、やっぱり入退院をくり返し、最終的に自宅でのホスピスケアに移行した。うちに帰ってきてほっとして笑顔さえ見せて、好きなインド料理もテイクアウトして食べた。それから一週間も生きなかったからだ。あたしは眠りながら考えていた。朝になったらダイアンに電話しようと。

朝、電話したら、息子が出て(遠くの州から帰ってきていた)、「おお、ひろみ、ひさしぶり、今は日本からか」と言いながら、なんだか歯切れが悪いのである。「今はちょっと忙しい、明日にでもかけ直して」と息子が言ったそのとき、後ろでダイアンの声が聞こえた。ひろみなら伝えていいと言ってたんだと思う。それで息子が話し始めた。「じつは父がついさっき亡くなって」と。

あたしははからずも、ジェリーの死を知った最初の人になった。眠りの中で、死んでいくジェリーと交信してたのかもしれない。

電話を切ったとたん、クレイマーがしんみりした表情で近寄ってきて、頭をあたしの股の間に突っ込んで、慰めるように、おかあさんだいじょうぶ、ぼくここにいるよという仕草をした。犬はみんなこれをする。でもクレイマーがしたのは初めてだった。