1000万円を回収するには

そして、俺には経営の知識もノウハウもなかったから、あっちに支払い、こっちに支払い、とやっていくうちに、気がついたら1000万円はすぐ消えてしまっていた。

資金だけではなく、頭もショートしてしまった。

これだけお金をかけても、このお店の主力商品となるのは一杯数百円のラーメン。

原価率を無視して考えても、1000万円を回収するには、毎日、どれだけラーメンを売ればいいのか?

いや、「回収するなんて、絶対に無理じゃないか」と、絶望に似た感情を抱いてしまったことを覚えている。

最初はなんにもわからなかったから、業者の人にいろいろとお願いしたんだけど、向こうも商売だから「これは絶対に必要です」「念のため、あれも買っておいたほうがいいですよ」とどんどん勧めてくる。

プロが言うんだから間違いないな、と言われるがままに買ってしまったけれど、あとになって思えば「あんなものは買う必要なんてなかったじゃないか!」と思うようなものもたくさんあったし、もっと安く買えたじゃないか、と憤(いきどお)ることも多かった。

初心者だから知らなくて当然、というのは甘すぎる。開業前のマイナスを少しでも減らすためにも、そのあたりのリサーチは徹底的にやるべきだと思う。

ここまで読んで、「俺は大丈夫だ」と思っている人がいちばん危険だ、ということも付け加えておきたい。

※本稿は、『プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る』(宝島社文庫)の一部を再編集したものです。


プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る』(著:川田利明/宝島社文庫)

知られざるラーメン屋経営の裏側と飲食業界の暗部を川田が赤裸々に語る禁断の書。

「ラーメン屋の開業を考えているなら、絶対にやめたほうがいい」――川田が見た地獄とは?