「僕が肝に銘じているのが、尊敬する森繁久彌さんのモットー、〈負けるな、腐るな、焦るな、いばるな、怒るな〉の《5つの『な』》」

86歳で始めた筋トレが与えてくれたもの

長い役者人生を振り返ると、いくつもの節目が思い浮かびます。2018年、86歳で筋トレを始めたことも大きな転機になりました。妻の瑤子さんに「一緒にやろう」と誘われたのがきっかけですが、実はほかにも理由があったんです。

その年、大河ドラマ『西郷どん』に西郷隆盛の祖父役で出演していました。足腰に不安はなかったものの、稽古から本番まで2時間以上も正座を続けると、さすがに立ち上がるのがつらくてね。役者を続けるなら、もっと鍛えなあかんと奮起したんです。

あれから6年。今も週に2回はジムに通っていますが、生活のなかでもトレーニングしています。

たとえば、咀嚼も立派な筋トレ。食事のたびに、何度も噛んで水分で喉を潤してから、ゆっくりと呑み込む。そうすれば、高齢者が陥りがちな誤嚥性肺炎を防げるし、便通もよくなりますから。

それに、日常のいろんな動作がスムーズになるなど、健康でいるだけで毎日がとても楽しいんです。年をとることを悲観しなくなりました。