人の死は、残った人に、ひとりで生きることを教えてくれる

一人の人間の死は、残されたものに何事かをしてくれている。親の他界はその代表であろう。

家人と彼女の両親の在り方を見ているとそれがよくよくわかる。

「時間が来ればすべてが解決します。時間がクスリです。それまでは、踏ん張り過ぎなくてもいいから、ちいさな、ごくちいさな踏ん張りで何とか生きなさい。踏ん張る力は、去って行った人がくれます。大丈夫です」

まるで宗教家か、詐欺師のような文章だが、他に言いようがない。

人の死は、残った人に、ひとりで生きることを教えてくれる。

それを通過すると、その人は少しだけ強くなり、以前より美しくなっているはずだ。

※本稿は、『風の中に立て ―伊集院静のことば― 大人の流儀名言集』(講談社)の一部を再編集したものです。

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風の中に立て ―伊集院静のことば― 大人の流儀名言集』(著:伊集院静/講談社)

作家・伊集院静さんが、生と死、冠婚葬祭での作法、大人の遊び方・働き方について語った言葉の数々を収録。

伊集院さんの言葉が、生活のさまざまな局面で、きっと人生の支えとなるはずです。