大助くんの伝言
その先生がICUに来て、「大助さんから、ご伝言を預かりました」と神妙な顔でおっしゃるから、何かあったのかとドキドキしながら「はい、お願いします」と言うと、「オリックスが優勝したよ」。
は?
確かに救急搬送されるまで二人で日本シリーズのヤクルト対オリックス戦を見てました。
見てましたけど、心肺停止の状態で救急搬送され、生きるか死ぬかをさまよって、ようやく意識が戻ったばかりの嫁にそんなこと言います?
それも毎日病院に通ってきて、なんとか会えないかとウロウロして。
後日、「なんであんなこと言ったん?」と聞いたら、まじめな顔で「気になっているやろうから、ちゃんと教えておいたほうがええと思って」ですって。
おかしいでしょう。
どれだけ深刻なときでも、あの人といると笑ってしまうんです。
※本稿は、『なにわ介護男子』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
『なにわ介護男子』(著:宮川大助・花子/主婦の友社)
血液のがん・多発性骨髄腫に夫婦で立ち向かう、宮川大助・花子。
厳しい病状もつらい介護も笑いに変えてしまう、心温まる闘病介護エッセイ。