ありがたいことに、その都度いいドクターに巡り合えたこともあり、その後3回かかったがんの治療や手術も無事に終え、今は普通の生活を送っています。ただ、術後に生じたさまざまな後遺症とは、この先も一生つきあっていかねばならないでしょう。
最初の手術ではリンパ節の一部を除去したために、30年以上たった今でも左足がむくみ、毎晩のマッサージが欠かせません。
また、やっかいなのは排尿障害です。子宮や卵巣という膀胱に近い箇所を手術したことで、膀胱の神経が影響を受けて、術後は尿意を感じることがまったくできなくなってしまいました。脳に「膀胱がいっぱい」という指令が来ないので、放っておくと突然尿があふれてしまうのです。
ロケ先やドラマの現場でそんなことになったら一大事ですから、1時間半を目安に必ず化粧室に行くようにしています。
もうひとつ、2回目の手術のときに胃を3分の1切ったので、食道を無理やり引っ張って短くなった胃とつなげたんです。そのために、食べ物を押し下げる働きがうまくいかず、ものがスムーズに飲み込めない。
お蕎麦などをツルツルッとかき込んでしまうと、たちまち喉に詰まって大騒ぎ。いったん詰まってしまったら、叩いても水を飲んでもダメで、吐き出すしかありません。
こうやってお話ししてみると、はたからは、大変な生活に思えるかもしれません。でも、だからと言ってメソメソしたり、クヨクヨすることはまったくありません。落ち込んでも後遺症が消えるわけじゃないし、自力ではどうにもならないことを悩んでいても、人生がもったいないじゃないですか。
私の場合、病気に限らず、仕事やプライベートで何かが起きてしまったときも、「2時間前は過去」と考えるようにしています。
たとえば、ドラマの撮影後に「なんであんな芝居をしちゃったんだろう」と考え込んでしまうときもありますよ。でも、悩んだり、落ち込んだりするのは2時間だけ。2時間たったら、「まあ、いっか。やってしまったことはしょうがない」と事実を受け入れて、「じゃあ、次のときはこうしよう」と気持ちを切り替える。
だって、タイムマシンでもあれば別ですけど(笑)、いくら頑張っても過去には戻れないでしょう。だったら「反省はしても、後悔はしない」。起きてしまったことを悔やむより、その経験を反省し、この先の人生に生かしたほうが、よっぽど毎日が楽しく過ごせるのではないかと思います。