2013年1月、ついに二度目の春高が開幕した

初戦となった2回戦の駿台学園戦から僕たちは勝ち進み、3回戦では東福岡高校、準々決勝で鎮西高校、準決勝で鹿児島商業高校を破り、大塚高校との決勝へと進んだ。

準々決勝までは3セットマッチだけれど、準決勝からは5セットマッチになる。
普段からよく練習試合もしてきた大塚高校を相手に、僕らは先に1セットを取ったあと、大塚高校が2セット目を奪取。

3セット目を僕らが取り返し、デュースまでもつれた第4セット、優勝まであと1点と迫った25対24のマッチポイントで、僕にサーブの順番が回ってきた。

そのとき、僕は決して大げさではなく、心からこう思った。
「この1本に勝敗がかかっているんだ。3年生を勝たせるため、この1本、獲るぞ」

バレーボールを初めてから数えきれないほどのサーブを打ってきた。
けれど、何も考えずに打つよりも、その1本に意味を込めて打つときのほうが、僕の場合はいいサーブを打てる確率が高い。

人によっては「大事な1本だ」と気負ってミスをしてしまうかもしれないけれど、僕はそう思ったほうがいいサーブを打てる。

三冠を決めた1本は、まさにそんな1本だった。

「3年生のために」打ったサーブは、サービスエースになり26対24。
3対1で星城高の初優勝が決まった。

インターハイ、国体に続き春高を制して三冠を達成した瞬間、僕はとにかく嬉しくて、「よっしゃ、決めたぞ!」と心からはしゃいだ。

勝った瞬間はとにかく嬉しくて、表彰式のときも僕はずっと、3年生の先輩たちや同級生後輩たちと笑っていた。

※本稿は『頂を目指して』(徳間書店)の一部を再編集したものです。


頂を目指して』(著:石川祐希/徳間書店)

この夏、パリの舞台で、世界の頂へ挑む石川祐希の初の自叙伝。
18歳で代表デビューを果たして以来、10年かけて名実ともに世界に誇る日本のエースに成長したバレーボーラーの石川祐希。
高校時代から日本のトップを走ってきたが、国際舞台では悔しい想いも味わってきた。


本書は石川が、選手として、人として、これまでの人生の喜怒哀楽を初めて綴った自叙伝。
バレーボールとの出会い、中学時代の試行錯誤、イタリアでの武者修行、オリンピックの舞台、日本代表キャプテン就任。


これらのターニングポイントを縦軸に、心の在り方、体のケアやリラックス方法、家族、仲間への想いを横軸にして、今・過去・未来を綴っている。