「本当の私は誰にもわからない。でもよく考えてみたら、私はひとりの時間がすごく好きだったなあ、と思って。それまで、夫とは仕事以外の時間を常に一緒に過ごしてきたので、ひとまず「自分の部屋がほしいかも」と相談して、自宅にはじめて私の部屋をつくらせてもらいました。」(撮影:大河内禎)

カイロプラクティックで受けたセラピーで

有名な鍼の先生の施術、カイロプラクティック、催眠療法……。ときには、拝んでもらったこともあります。ありがたいパワーを持っている棒で、患部を血が出るほどこする、というヘンな療法も受けちゃいました。(笑)

お医者様たちからは、「そんなことはやめて、きちんとお薬を飲んでください」と言われました。でも、脳の機能性障害なのだからストレスとは関係ない、と言う先生もいれば、ストレスで脳が混乱していると診る先生もいて。ただただ「心因性」と言われたくない一心の私は、誰のことも信じられなくなっていたんです。

そんなある日、カイロプラクティックで受けたセラピーで面白い経験ができました。それはアクティベータという機器を使い、関節に振動刺激を与えて血流をよくしたあと、ある一定の言葉やシチュエーションに体がどう反応するかを見ていくもの。無意識に体が緊張する瞬間を探るんだそうです。私はこういう性格なので(笑)、ハナから疑いの目を向け、「ものは試し」くらいの気分で出かけました。

そこで、実家のことを聞かれたんです。私は父と母と姉の4人家族だったのですが、ほかの誰にも体が反応しないのに、父のときにだけ足が反応すると言われました。

「お父さんに対して、イヤな記憶はありますか」と聞かれるものの、まったくない。父は魚屋で威厳もあり、いわゆる昭和のお父さんみたいな人だったから怒られたこともたくさんあります。でも私にとっては優しくて大好きな父でした。

「なんでそんなことを聞くんだろう?」と、よりいっそう疑いを強くしていると、「お父さんが帰ってくるまで食事に箸をつけない、お父さんは一家の大黒柱……そういう、あなたにとって誇りだった家族のあり方はすりこまれたものなんじゃないですか」と言われました。