薩長史観の見直しが進んだきっかけ

そんな記念すべき明治維新150年だが、このところ、薩長史観の見直しが進んでいる。というより、否定されていると言ったほうが正確かもしれない。

そのきっかけとなったのが、原田伊織氏の著書『明治維新という過ち』(毎日ワンズ)である。2012年に出版されたが、増補版として2015年に出版されたころから話題となって大ヒットし、さらに2017年には講談社文庫に入った。

『逆転した日本史~聖徳太子、坂本竜馬、鎖国が教科書から消える~』(著:河合敦/扶桑社)

その副題が「日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト」という衝撃的な文言だったことも読まれる原因だったのだろう。

確かに吉田松陰は、安政の大獄が始まると、大老井伊直弼(なおすけ)の手先となって京都で尊攘派を弾圧する老中間部詮勝(まなべあきかつ)の襲撃を叫び、さらに弟子たちに先駆けになって死ぬことを求めた。

実際、久坂玄瑞(くさかげんずい)や高杉晋作など弟子の多くが、過激な攘夷運動を繰り返した。

ただ、歴史を見ればわかるとおり、政権を倒そうとする革命家は、強大な権力に真っ向から立ち向かうことは不可能ゆえ、権力者に対する暗殺やテロという手段をとることは少なくないし、それ以外、弱者が強者に勝つことは難しい。

やはり私は吉田松陰は偉大な教育家であり、あそこまで弟子たちが過激になったればこそ、幕府は瓦解に至ったのだと思っている。