時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは千葉県の70代の方からのお便り。息子からのお下がりでもらった、お掃除ロボット。動き出すものの10分ほどで動かなくなってしまう。そんな掃除ロボに夫は――。
定年後の感慨?
「最後まで働かせてやろう」と言いながら、夫がせっせと動いている。何をしているのかと言うと、お掃除ロボットのお世話だ。
「清掃を開始します」と宣言して動き出すものの、10分ほどで動かなくなってしまう。そのたびに、夫はかいがいしく抱え上げては充電ステーションまで運んでやるのだ。
もともとお掃除ロボに興味を持ったのは私だった。テレビで見て「便利そうだね」と水を向けても、夫は、「そんなの必要ない」とにべもない。それが180度変わったのは、息子のおかげである。
数日前、近くに住んでいる息子が、「お掃除ロボットを買い替えたら、それまでより小型なのにとても有能なんだ」と言いつつ、「試しに使ってみなよ」と古いほうのお掃除ロボを置いていったのだ。
夫は息子の言うことは素直に聞く。私がここぞとばかり、「うちも同じのを買ったら、息子に設定とかやってもらえて助かるね〜」と言うと、案の定、夫は「そうだね」とあっさり同意。夫の気が変わる前にさっそく新しいお掃除ロボを注文した。ラッキー!
切り込み隊長となってくれた古いお掃除ロボはちょっと不憫だが、ロボットが家族の一員となる日も近い。
それから新しいお掃除ロボが来るまでの間、「充電します」「清掃を開始します」などと懸命にお掃除をしてくれる旧型ロボに、どうやら夫は感情移入してしまったらしい。
定年を経験した彼なりの感慨があるのだろう。