心の宝箱に入れておく

わたしが30代40代のころのウチは、出たり入ったりする人たちも含めて、大層にぎやかでした。

マンガのほうもいくつもの連載を抱えて、一番脂がのっていた時期でしたね。

そのころ、わたしは家のことはすべて義母まかせでしたが、そのお蔭で、年にいくつかの行事をきちんとつづけていて、特にお正月は義母の指図で家族全員張りきっていました。

お正月の割り箸の袋に一人ひとり自分の名を墨で書くという習慣も、義母が指導したことで、義母の「米子」という字が一番大きく堂々としていました。

わたしのマンガに登場する人はほとんどモデルがいます。その人たちがやらかした失敗や面白いことを、心の宝箱に入れておくのです。

そしてアイデアを出すとき、取り出してわたしのマンガ力でヒネってコネてコママンガに仕立てるという、わたし流。

マンガができたときは、まず一番に自分が笑っています。真夜中に「ケッ作だ!」と(でもほとんど翌日になると凡作になるんですがね)。

※本稿は、『こんにちは! ひとり暮らし』(興陽館)の一部を再編集したものです。

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こんにちは! ひとり暮らし』(著:みつはしちかこ/興陽館)

83歳、今はいない家族や友人を思い出しながらひとり暮らし。

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