権威を持った“青表紙本”
(1)の藤原定家は、あまりにも有名な天才歌人です。
定家も『源氏物語』のすばらしさに注目し、原本の復元に努めました。
和歌の世界において彼の作品と名は神格化されていきますので、室町時代ごろより、彼がまとめた青表紙本が「源氏物語」の「正しい」本文であると認識されるようになっていきます。
たとえば室町時代後期の公家(極官は内大臣、また文化人・大学者)だった三条西実隆は、『弄花抄』のなかで、河内本よりも青表紙本の方が文学的に優れていると説きました。
そのため青表紙本は、その他の伝本を凌駕する権威をもったのです。