近代での『源氏物語』の扱い

さらに富国強兵を国是とする明治の世においては、『源氏物語』の評判は散々でした。

キリスト教の伝道者として知られる内村鑑三は「あのような文学はわれわれのなかから根コソギに絶やしたい」「『源氏物語』が日本の士気を鼓舞することのために何をしたか。何もしないばかりでなくわれわれを女々しき意気地なしになした」と言い、文学者の正宗白鳥は「読みながらいく度叩きつけたい思いをしつづけたか」とこき下ろしています。

『源氏物語』を評価した明治の文化人は、尾崎紅葉・樋口一葉・与謝野晶子くらいです。

けれども戦後になると、『源氏物語』は復権を果たしました。

現代語訳を上梓している田辺聖子は「男が始めた戦争が敗戦というかたちで失敗して、『源氏物語』が甦った」と、男性文化の崩壊と『源氏』の復権を語っています。

実際、悲惨な戦争への反省や昨今の女性の活躍を鑑みるに、田辺の指摘の正しさを痛感するべきなのでしょうね・・・。


開催決定!《歴史探訪》本郷和人先生が同行!平安貴族ゆかりの京都2日間

本連載で解説を務める本郷先生の解説の元で歴史の舞台を巡るツアー企画。好評につき、徳川編武田編に続く第3弾【平安貴族編】の開催が決定いたしました!

(写真提供:Photo AC)
<魅力あふれる旅のポイント>
●単に観光地を巡るツアーとは違い「歴史」の知識を深める、大人の為の学び旅です。
●歴史学者・東京大学史料編纂所教授 本郷和人先生が同行!現地を実際に見ながら、詳しい説明を聞き、質問し、歴史のダイナミズムを自ら体感することができます。
●今年の話題! 紫式部ら平安貴族ゆかりの京都を2日間かけて巡ります!また在原業平と菅原道真が活躍する『応天の門』(灰原薬/新潮社)を監修している本郷先生ならではの、ここだけの話も!?
<予定訪問地>
・華やかな藤原摂関時代をしのぶことのできる世界遺産「平等院」
・紫式部が「源氏物語」の着想を得たとされる「石山寺」
・平安遷都1100年を記念して創建!桓武天皇と孝明天皇を祀る「平安神宮」
・歴代天皇の居所「京都御所」
・菅原道真公をお祀りした神社の宗祀「北野天満宮」
<そのほか>
2日目昼食後には本郷先生との懇談会のお時間もご用意!
離れていても案内が聞こえるイヤホンガイド付きで「密」回避!
ご宿泊は京都市内の好立地なホテルへ!
*詳しくは読売旅行のサイトでご確認ください。