すでに身近なフルーツ魚(フルーツフィッシュ)
養殖魚を敬遠する人の最大の理由は、餌からくる臭み。それから脂肪分のしつこさだ。
フルーツ魚とは、柑橘類の果実を餌に混ぜて育てた養殖魚のことをいう。柑橘を用いる理由は、養殖魚臭と呼ばれる人工飼料由来の臭みの軽減に効果が認められているからだ。
事業化では、香川県の、オリーブの葉の粉末を混ぜた餌で育てたオリーブハマチに後れをとったものの、フルーツ魚の開発は高知大学農林海洋科学部海洋資源学科が先行していた。
2005年(平成17年)に技術開発を始めた高知大学では、ブリにユズ果汁を加えた餌を食べさせたところ、ブリの身からほのかに柑橘系の香りがすることに気づく。
柑橘には養殖魚のさっぱり感を増す効果があることを確認したうえで、2007年に試験販売したのが、鹿児島県長島町の東町(あずまちょう)漁協の「柚子鰤王(ゆずぶりおう)」である。
その後、大分県農林水産研究指導センターが県内の養殖業者と開発に取り組み、2010年の「かぼすブリ」にはじまり「かぼすヒラメ」「かぼすカンパチ」と、品揃えを増やしている。餌にはカボスの果皮と果汁が配合されている。
匂いに敏感な子どもや女性だとカボスの香りを感じられるそうだが、試食した私はどう頑張ってもその香りを見つけられなかった。