現在の橋の記号

明治33年図式までは、この他に遊動橋(可動橋)と懸橋(吊り橋)の記号が加わっていた。

これに対して現在の橋の記号は実にシンプルで、2本線の橋と1本線の橋の2種類しかない。

前者は道路記号の幅に合わせたもので、後者は記号幅員が0.3ミリ未満の道路(軽車道・幅員3メートル未満、または徒歩道・幅員1メートル未満)が対象である。

従って登山道レベルの破線の道が通る橋も1本線で描かれるので、橋の部分が破線になることはない。

細かいことを言えば、図2のような中央分離帯のある高速道路の広い道路の橋は3本線になるが、これは区別しないことにしよう。

<『地図記号のひみつ』より>

いずれの記号も橋の区間であることを明示するため、橋の両端に「披開部」という外側に少し反った線(長さ0.3ミリ)を配し、さらに橋記号と道路記号の間には「微量の白部」と呼ばれるわずかな空白をあけて橋を際立たせている。

なお鉄道橋の場合は高架橋も含めて「披開部」はなく、鉄道線の記号の両側に橋の区間だけ細線を添えるのみだ。

道路も鉄道も川に架かる橋梁と高架橋の記号は同じで、いずれも2本線の道路橋と鉄道橋の記号については、図上2センチ(2万5千分の1なら500メートル)以上の長さをもつ場合には、橋が続いていることをわかりやすく示すために「半円点」を4ミリ間隔で置くことになっている。

※本稿は、『地図記号のひみつ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


地図記号のひみつ』(著:今尾恵介/中央公論新社)

学校で習って、誰もが親しんでいる地図記号。地図記号からは、明治から令和に至る日本社会の変貌が読み取れるのだ。中学生の頃から地形図に親しんできた地図研究家が、地図記号の奥深い世界を紹介する。