(写真提供:Photo AC)
地図を読む上で欠かせない、「地図記号」。2019年には「自然災害伝承碑」の記号が追加されるなど、社会の変化に応じて増減しているようです。半世紀をかけて古今東西の地図や時刻表、旅行ガイドブックなどを集めてきた「地図バカ」こと地図研究家の今尾恵介さんいわく、「地図というものは端的に表現するなら『この世を記号化したもの』だ」とのこと。今尾さんいわく、「かつては橋の記号にもいろいろな種類があった」そうで――。

橋と軍隊の深い関係

「コンクリート造、長さ80メートル、幅12メートル、耐荷重量60トン」といった表記が地形図に印刷されていたとしたらどうだろう。

今から34年前に東西ドイツが統一された直後、そのころ外国地形図の収集に熱を上げていた私がまず注文したのは、旧東側にあたるザクセン州やテューリンゲン州などの地形図であった。そこに記されていたのがこの表記である。

<『地図記号のひみつ』より>

このデータは橋の記号の傍らに数式のように掲げられていた略記を解読したものだが、最初は当然ながら意味がわからず、ドイツの測量局に読み方を問い合わせる手紙を書いた。

折り返し送られてきたのが東独の地図記号に関する詳細な部内用マニュアルで、これで読み方を教わったのである。

この本によれば、橋の他にも川なら水深や流速に加えて川底が泥か砂かなどの「底質」まで細かい表記方法が定めてあり、道路なら車線数と舗装の種類、鉄道は単線・複線や電化の区別はもちろん勾配も記号で区分表記、森林では樹種と幹の太さまで記してあった。

まさにあきれるほど詳しく、そんなことをやっているから国が潰れたのではないかと邪推したものである。