ステュクス川を渡る風景
16世紀前半のフランドル画家ヨアヒム・パティニールが『ステュクス川を渡るカロンのいる風景』を描いている。
ここで巨大なカロンが乗せている亡者は1人だけで、両岸は画面むかって左が天国、右は地獄になっている。
左に連れてゆかれた善なる魂は、天使といっしょに豊かな森を散策しているが、右では地獄の炎に焼かれている。
果たしてこの魂はどちらへ連れてゆかれるのだろう。
舳先(へさき)は地獄の門へと傾いているような気が……。
※本稿は、『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』(著:中野京子/中央公論新社)
ちょっとした知識があれば、隠された画家からのメッセージを探りあてることができる。
「見て・感じる」だけではわからない、絵を読み解く手がかりをテーマ別に解説。
この本を読めば、鑑賞体験はもっと豊かなものになる。