ステュクス川を渡る風景

16世紀前半のフランドル画家ヨアヒム・パティニールが『ステュクス川を渡るカロンのいる風景』を描いている。

ヨアヒム・パティニール『ステュクス川を渡るカロンのいる風景』1520-1524年 プラド美術館蔵<『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』より>

ここで巨大なカロンが乗せている亡者は1人だけで、両岸は画面むかって左が天国、右は地獄になっている。

左に連れてゆかれた善なる魂は、天使といっしょに豊かな森を散策しているが、右では地獄の炎に焼かれている。

果たしてこの魂はどちらへ連れてゆかれるのだろう。

舳先(へさき)は地獄の門へと傾いているような気が……。

 

※本稿は、『カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


カラー版-西洋絵画のお約束-謎を解く50のキーワード』(著:中野京子/中央公論新社)

ちょっとした知識があれば、隠された画家からのメッセージを探りあてることができる。

「見て・感じる」だけではわからない、絵を読み解く手がかりをテーマ別に解説。

この本を読めば、鑑賞体験はもっと豊かなものになる。