兵士が戦闘任務中に戦死すると、遺族には補償金と家族扶養年金が政府から給付される。だが、そのためには、何枚もの公的書類を揃えなければならない。
オレナさんは役所をたらいまわしにされた挙句に「書類不備」とされた。所属部隊が必要書類を発行してくれなかったのだ。結局、彼女が受け取ったのは、夫の「名誉の戦死」を称えた証書1枚だけだった。
オレクサンドルさんのいた空挺突撃隊の前線での戦いは熾烈を極め、毎日、何人もが敵弾に倒れていったという。夫の遺体は腕が折れ、肩が裂け、腹部と足を激しく損傷していた。
「夫は国を守るために命を捧げました。でも国はそれに報いてくれません。もう勝利を信じられなくなりました……。幼い娘とどうやって生きていけばいいのでしょう」
オレクサンドルさんが最後まで身に着けていた認識票を手にしながら、彼女は涙を浮かべた。