(写真提供:Photo AC)
日本の20歳以上の慢性腎臓病(CKD)の患者数は、約1480万人と推定されるそう。腎臓は「沈黙の臓器」と言われ、気づかないうちに悪化してしまうおそれがありますが、東北大学名誉教授の上月正博先生は「かつて<不治の病>とされてきた慢性腎臓病は、運動と食事で<治せる病>になりつつある」と語っています。そこで今回は、上月先生の著書『腎臓の名医が教える 腎機能 自力で強まる体操と食事』から一部引用、再編集してお届けします。

慢性腎臓病=安静第一は正しいのか?

長い期間、世界的にも「慢性腎臓病になったら安静第一」が常識でした。その理由としては、慢性腎臓病の患者さんが運動をすると、尿たんぱくが増えるためです。

腎臓のろ過機能を担う糸球体(しきゅうたい)で尿がきちんとろ過され、必要なものがきちんと再吸収されれば、本来、尿にたんぱく質は混じりません。

しかし、運動すると、尿にたんぱく質が漏(も)れ出てきます。本来、通り抜けるべきではないたんぱく質が糸球体を通り抜けてしまうこと、このこと自体が糸球体にとっての負担となります。すなわち、腎機能を悪化させる要因になると考えられてきました。

たんぱく質が糸球体を通過してしまう状態が続けば、病気の進行がそれだけ早まるとされ、運動は避けるべきとなったのです。

実際、慢性腎臓病の患者さんが入院して安静にしていると、尿中に出るたんぱく質は減ります。それが安静による効果と見なされてきたのです。

しかし、そんな患者さんが退院したのち、普通に生活をしているだけでも、また入院前と同じように尿にたんぱく質は出るようになります。

つまり、安静にしたから腎機能がよくなったわけではないのです。

こうしたパターンの患者さんを多く診てきて、腎機能が低下しつつある状態の患者さんにとって、安静にすることが本当に腎臓の保護につながるのだろうかと、私は疑問を抱くようになりました。