3〜4DAYS:やっと帰還
8月31日。この日はお互いに家事をした。昨夜の居酒屋代金は奢ってくれたものの、ずっと宿泊することが申し訳ないと言う、ちいちゃん。そこで彼女が得意の掃除と、裁縫をお願いした。その間、私は台所仕事をする。これも2人で旅行をする時のポイントでお互いに得意分野で、役割分担をするといい。スケジュールを組む、現地で検索するなど、意外とやることだらけの旅行は「得意でしょ!」と、誰かに全てを押し付けてはいけない。
ちなみにふたり。悪天候で遠出もできないので、麻布台ミッドタウンで観光客にまみれて、夕飯を買い出しして、大人しくテレビを観ながら1日を終えた。30代でもあるまい、2日間も飲みに行く、体力はあっても、今後のために温存しておかなくてはならない。ただ、だんだん相手の行動も癖も分かってくるので、妙なストレスは無くなっていた。
お互いに譲歩していたのか、喧嘩もなかった。ただ、こんな会話はあった。
「週明けまで新幹線が動かないようなら、私、ここを出てホテル探す」
「なんでいいよ、泊まってなよ」
「久乃の仕事の邪魔しちゃ、悪いじゃん」
「こんな台風の危険な最中に追い出したら、あんたのおばさん(ちいちゃんの母)と、うちのお母さんに末代まで祟られると思うから、いていいよ。月曜からは寝室を自由に使ってくれ」
結局、外食や夕飯代を彼女が持つ、ということで話はついた。妙な気遣いは有事には不要かもしれない。目標は無事に帰ることだ。
そして9月1日。4日目にしてついに新幹線の動く兆しが見える。ちいちゃんは自宅で慣れない新幹線予約に数時間、格闘していた。そんな彼女の姿を見ていて思ったのは、大人たるもの、最低限の交通アクセス手段は確保しておいたほうがいいこと。慣れない土地で、アプリを入れて、クレジットカードと連結させることは、おばさんにとって一苦労。20代のようにスマートにはいかない。必要がない、というけれど、ちいちゃんように急きょ、交通機関の足止めをくらって、会社の有給を取って、自宅に帰ることができない状況に陥る可能性もあるのだから。
この夜、またおばさんふたりは静かに自宅で、惣菜を買ってきたり、作ったりして、プチ宴会。結局、いろいろあったけど「楽しかったね」とぼやく。私なんて、自宅にいるだけなのにすっかり脳内がリフレッシュされていた。フリーランスは止まることが怖くて、どうもエンドレスで仕事をしてしまいがちだけど、きっちり休むことも必要だと、今さらながら反省をした。