しかし、ここで新たな問題が発生する。それは「老眼」だ。

術後、遠くのものがよく見える一方で、近くのものが見えづらく感じるようになったのだ。もちろん急に視力が変わるわけはないから、すでに始まっていた老眼に見て見ぬふりをしていたのだろう。

ピアノの楽譜は、細かい音符だとただの黒丸にしか見えないし、スマホの文字もそのままの大きさではほとんど見えない。

しかたなく文字サイズを大きくしてみたら、たまたま帰省していた次女に見られ、「文字大きいねぇ!」とびっくりされた。それ以来、スマホの画面はなるべく人に見られないようにしている。

それから、困ったのは読書だ。私はどこへ行くにも必ず本を持ち歩くほどの読書好き。背に腹は代えられぬ、と老眼鏡を作ってかけてみるが、今度は恥ずかしさが私を襲う。

「老眼鏡をかけているということは、見た目よりオバサンなんだ」と思われそうで怖いのだ。それに、外見を気にしなくなると老化が進むと聞いたこともあるし……。

結局、見栄を優先して外では老眼鏡をかけずに本を読んでいる。腕を目一杯伸ばして本を目から可能な限り離しているので、むしろ老眼がバレそうではあるが、もはや意地である。

複雑な漢字はぼんやりとしか見えないので、前後の文脈から推測。一種の脳トレと思うことにした。どうか私を見かけても、「見栄っ張り」ではなく、「頑張っているね」と思ってほしい。