お金はあの世にはもっていけない

お金にあまり執着がないもう一つの理由は、パートナーをがんで亡くしたからです。母の反対があって正式な結婚はできませんでしたが、一時期、一緒にいて。でも、55歳という若さで亡くなってしまったのです。

彼とはずっと割り勘でやっていましたが、病気になって初めて、けっこう収入があり、貯金もしっかりあることがわかりました。でも彼は結局、自分のお金で生活を楽しむことなく、逝ってしまった。もっとお金を使って楽しめばよかったのに、と思いました。

そして私自身、母の介護をしている時に大腸がんになり、ステージIIIAと診断されました。50代半ばのことです。そうした経験を通して、お金はあの世にはもっていけないという考えが、より強固になったわけです。(笑)

もともと私は、そうそう大散財する性格ではありません。ちまちまと浪費するのが楽しいんです。最近は石の面白さにはまって、ミネラルフェアに行ってわけのわからない結晶体を買ってきたり。宝飾市で何千万円の宝石を眺めつつ、自分は9200円のものを買って帰る。

ヤフオクであやしい石を買うこともありますが、それで私は十分、楽しいのです。食事にはけっこうお金をかけており、エンゲル係数が高いけれど、それだってたかが知れています。

それに銭湯なんて、470円で極楽気分を味わえる。470万円あれば好きな石を買うこともできますが、470万より470円を選ぶのが、私の生き方だと思います。お金は使い方を間違えるとオッカネー。(笑)

定年退職をしたら、なるべく移動していたいですね。母は家にいるのが好きでしたが、私には船乗りの父の呪われた血が流れているので。とはいえ、私が思い描いているのは湯治場に行って自炊するなど、ささやかなこと。いわばフーテンの寅さんみたいな感じでいられたらいいな、と。

父は港、港に女を作るタイプでしたが、私は湯治場、湯治場に、茶飲み爺さんを作りたい。“女寅さん”として、ふらふらしていたいですね。