野党時代の苦難を知る者として

この時、野党一般にありがちな、重箱の隅をつつくような質疑は慎みました。また逆に、「この件について総理のご意見を伺います」というような質問も無駄。中長期的視野からその問題をどう捉え、どう大局的な議論を組み立てるかにも腐心しました。

質疑というより、ディベート(討論)の場となるよう、心がけました。日本ディベート研究協会の代表である北岡俊明さんを呼んで、予算委が終わった後に講評と、次回へのアドバイスをいただいたりもしました。

それは手練手管で上手に立ち回る、ということではなく、国会中継を見ている人に対して自民党は野党になって過去をきちんと反省した、人材も豊富だし、政策立案能力もさすがだ、と思ってもらうために誠心誠意努めました。

そういった積み重ねがあったからこそ、民主党政権3年余の後、比較的スムーズに自民党に政権が移行したのだと思っています。

このような努力が、今の野党には決定的に欠けているのです。

今の自民党議員で野党時代を知っている人はもう、半分ほどになりました。安倍一強の時代しか知らない先生方には、野党時代のことなど話されても、あまり実感はないでしょうし、野党に勢いがある、という状態のイメージもつきにくいのかもしれません。

しかし、今のまま野党が駄目なら、与党議員はだんだんと自分たちと違う意見に対するリスペクトを持てなくなり、権力政党としての思い上がりを自省する機会も持てなくなります。

与野党がお互いを高め合う、より健全な関係を作り上げるために、野党に注文を付け奮起を期待するのは、野党時代の苦難を知っている者としての責務ではないかとも思っています。

※本稿は、『保守政治家 わが政策、わが天命』(講談社)の一部を再編集したものです。


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