患者のQOLに欠かせない総合診療医はたった2%
医者は病気があればその治療を優先したがりますが、それが必ずしも患者さんにとっていちばんいい選択なのか。
患者の立場に立って「QOLが保たれるか」「その治療が活力を奪い、老化を進める原因にならないか」といったことを検討する医者の存在が必要なのですが、日本でそうした医者を探すのは大変苦労します。
イギリスでは、ジェネラル・プラクティショナー(GP)という制度があります。患者は特別な理由がないかぎり、直接専門医のいる病院には行けないしくみになっていて、一人のジェネラル・プラクティショナーに継続的にかかわり、そのとき必要な検査や治療、緩和ケア、家庭の問題なども含めて、ケアを受けることができます。
日本では「かかりつけ医をもとう」と厚労省は呼びかけていますが、一人で複数の科に対応できる医者は非常に少なく、一人の患者さんの健康に関する総合的な相談に応じる「かかりつけ医」として役割が果たせていないのが実情です。
近年は、全体的な健康問題にかかわる総合診療医を育てようという機運が高まってきました。患者さんのQOLや価値観に寄り添った治療の選択をアドバイスし、飲んでいる薬を把握して多剤併用を防ぐことが期待されています。
しかし、残念なことに、日本に総合診療医は2%しかいません(これもきちんとしたトレーニングを受けていない人がほとんどで、必ずしもあてになりませんが)。
超高齢社会に求められる医者は、治療のメリット・デメリットが全身的にどんな影響を及ぼすのかを判断しながら、その人の望む暮らし方をかなえるために手助けできる医者です。そうした医者が一刻も早く増えることを願っているのに、なかなかその動きは見られません。