“森昌子”から“森田昌子”に戻ります
引退会見をした3月28日は奇しくも父の命日でした。だから、父も天国から、「昌子、頑張ったな」と言ってくれていたと思います。
今は、昨年10月からスタートした「森昌子祝還暦コンサート」で全国を回っています。今年いっぱいまでツアーの予定ですが、全130会場のうち、残りが70会場ぐらいになりました。
1日が終わるたびに、公演カレンダーの日付をビィーッと消して、残りの公演数や会場を確認しています。1日2回公演の日が多く、正直、体力的にはきつい。でも、舞台の幕が開いた瞬間、お客さまの視線が私に集まり、ワァーッと拍手をいただいた途端、魔法にかかったように疲れが消えちゃうんです。
芸能生活に悔いですか? ないです。すべてやり切りましたから。これは自信をもって言い切れます。内気な子どもだった私が芸能界に入ってさまざまな経験をさせてもらい、なおかつ結婚生活も子育ても経験できて、還暦まで歌ってこられた。これは本当にありがたいことです。
デビューから今まで、ずっと応援してくださっているファンの方々のお陰で、森昌子という歌手は、本当にいい時代に生まれて、いい時代に去ることができる。恵まれているな、とつくづく思います。
そして、コンサートが終わり、年が明けたら、私は“森昌子”から“森田昌子”に戻ります。
よく「引退後に何をしたいか?」と聞かれるのですが、実は、私自身まだよくわからないんですよ。好きな映画や絵画を観たり、料理のレパートリーももう少し広げたりしたいかな、と漠然と思ってはいるのですが……。
正直言って、私、切符の買い方も知らないんですね。13歳でデビューしてから今までは全部スタッフが用意してくれていたので、私は言われるままに後をついて行っていただけでしたから。子育て中も、車移動がほとんどで、バスを数回使ったくらい。(笑)
スマホは昨年の10月の誕生日にスタッフからプレゼントされて、やっとスマホデビューしたばかりで。一から教えてもらいましたけど、いまだにメールと通話しかできない。でも、おサイフケータイは使ってますよ。チャリンというあの音を聞くと、「うわあ、私にもできた」って嬉しくなります。(笑)
これからは、母と2人の生活になりますね。母とは2人きりで旅行をしたことがないので、引退したら、ゆっくり温泉旅行にでも行きたいな。これからできる親孝行が、まだまだあると思っています。それに、私は日本全国、行ったことのない都道府県はないのですが、仕事で訪れていただけで、観光をしたことがないのです。元気に歩き回れるうちに、自分でスケジュールを立てて名所旧跡を巡りたいと思います。