抗がん剤には副作用がある
養老先生の肺がんは限局型なので、治癒を目的として治療計画が立てられています。治療は「テキトーにやってください」というメールをいただきましたが、治癒が可能ながんなので、われわれとしては、テキトーに治療することはできません。
一般に若い人で心腎機能に問題ない場合は「シスプラチン+エトポシド」という抗がん剤の組み合わせが標準治療になるのですが、高齢者や心腎機能低下がある人は「カルボプラチン+エトポシド」を選択するのが一般的です。高齢であることから、養老先生は後者の抗がん剤が用いられています。
抗がん剤の点滴は、1日目はカルボプラチンとエトポシドをそれぞれ1時間、2日目と3日目はエトポシドを1時間点滴します(このほか、吐き気止めの薬や電解質補液の点滴も前後に行う)。
3日目の抗がん剤治療を終えたら、原則として3週間休み、全部で4回同じことを繰り返すのです。
抗がん剤は、がん細胞の分裂を止めて、やがて死滅させる薬です。ただ、がん細胞だけでなく、正常細胞にもダメージを与えてしまうので、副作用が現れます。
カルボプラチン+エトポシドの副作用には、吐き気・嘔吐や脱毛、手足のしびれ、間質性肺炎、感染症などがあります。
感染症は、白血球の減少により細菌やウイルスに感染しやすくなる副作用です。細菌やウイルスの感染を防ぐのは白血球の免疫細胞ですが、抗がん剤は白血球など血液細胞をつくる骨髄の働きを抑制するため、白血球の数が減少して、感染症にかかりやすくなってしまうのです。
※本稿は、『養老先生、がんになる』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
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